「東京スパイ大作戦」 感想
1945年アメリカ
監督・フランク・ロイド
出演・ジェームズ・キャグニー、シルヴィア・シドニー
戦前の東京を舞台にキャグニー扮する新聞記者が、
実在した怪文書「田中上奏文」を巡り活躍する諜報物。
あらすじ
東京にある米国新聞社「東京クロニクル」の編集局長キャグニーは
時の首相・田中儀一が中国全土、ひいてはアメリカ征服をも計画している
という記事を書き、当局にマークされる。
ソースは噂らしい。
折も折、部下のミラーが何故か大金を手にし、突然帰国するという。
キャグニーが船に見送りに行くと、ミラー夫人は殺されており、
謎の女が部屋から逃げ出す。
ミラー夫はキャグニーの家に転がり込むが撃たれており、
問題の計画、田中文書を手渡して死んでしまう。
でっち上げの罪で一晩拘留されたキャグニーが帰宅すると、
死体も隠した文書も消えている。
文書が公表されれば反日活動が起こってしまう。
取り戻したい田中首相、東条英機と会ったキャグニーは、
ミラー夫妻を殺したオオシマ巡査部長が逮捕されたら文書は現れるだろう、
と返還を拒む。
田中達は、米中ハーフの女シルヴィア・シドニーをキャグニーに接近させ
文書を取り戻そうとする。
ミラーの船室に潜んでいたのも彼女だ。
シドニーは田中の手先でありながらも、中国侵略を防ぎたいという心もあり
次第にキャグニー側になる。
実は文書も彼女がキャグニーの家から盗んだまま、
田中には渡さず隠し持っていた。
盗聴で彼女の心変わりは田中側に知れてしまうが、
間一髪逃げ出して潜伏する。
シドニーと会ったキャグニーは、文書を彼女に託し、
オオシマ巡査部長と対決し倒す。
アメリカ大使館に向かったキャグニーは待ち伏せにあうが、
文書を持っていないことから、日本側も手を引き、無事大使館に保護される。
おしまい。
パブリットグメインの格安DVD化されてるし、題名が題名なんで
とんでもなくC級と思う向きもおられようが、なかなか見ごたえのある
ちゃんとした(笑)映画。
監督のフランク・ロイドは古くから活躍してたベテランだし、
プロデューサーのウィリアム・キャグニーはジェームズの弟だから
まぁ、変なもの作るわけもないか。
キャグニーは30年代の作品のようなエネルギーはちょっと減少気味だけど、
まだまだ魅力的で、なんというか「姿が良い」
シルヴィア・シドニーも、ハーフと見えなくもない顔立ちだし、
エキゾチックな役柄に合ってる。
また特に素晴らしいのが彼女の衣装で、すっごく素敵。
外出着は「ちょっと盛り付けすぎ?」とも思うが、自室での服も中国風味で、
ハリウッドは本当に「夢の工場」だったんだな…と思わせる。
ちなみに衣装デザインのマイケル・ウォルフはこの作品が初仕事だとか。
1945年公開ということで、「日本人にとって異国情緒溢れる日本」が出ると思いきや、
これが意外にまとも。
看板などの日本語は、多少は変だが、決してデタラメに漢字並べただけではなく
日本語になってる。
また日本語のセリフもイントネーションは仕方ないが、言葉の区切りなどが正しく
聞けばちゃんとした日本語になってる。
街中の風景や人々の服装、お店の内部なども「戦前の浅草とかならあり得るのかな」
程度にまとまっている。
シルヴィア・シドニーのホテルの部屋では、フランク・ロイド・ライトの帝国ホテルの
ような装飾も見られ、これはかなり日本に詳しい人がきちんと関わってると思われる。
そのかいあってか、1945年度のアカデミー室内装飾賞白黒部門を獲得してる。
本作では、田中儀一、東条、命懸けで田中たちに反対するタツギ殿下など
主要日本人役を白人俳優が演じてる。
ちなみに東条をやってるのは「キング・コング」のデナム役で有名な
ロバート・アームストロング。
この手の映画の場合、「そんな顔だから」というだけで、
素性の知れないアジア系の人が演じることが多く、たいていの場合素人同然、
演技もへったくれもない、ってのがあるけど、本作では演技力のある俳優。
お陰で自然に見れていいんだけど、アジア系じゃないから違和感がないというのも
裏をかかれたようでおもしろい。
もっとも日本人同士の場面でも英語だが、これはアメリカ映画だし仕方ないね。
ついでに書くと、東条は誰が見ても「東条だな」ってくらいよく似せてる。
田中儀一も本物よりかなり悪人顔だけど雰囲気は似ている。
もうひとつ、この映画で特筆すべきは柔道。
柔道や柔術はかなり古くからアメリカ映画の中に顔を出していて、
最古のものは1921年。
日本人の召使が柔術を使うシーンがあるそうだ(題名は調査中)
しかし、この映画では柔道が全面に現れている。
まずキャグニーは柔道の黒帯という設定。
敵役のオオシマ巡査部長も使い手で、クライマックスでは大柔道格闘シーンがある。
最終的に柔道では適わないとわかったキャグニーがパンチ連打で勝つとはいえ、
このシーンの迫力は今見てもなかなかのものだ。
特に長身のオオシマ巡査部長の動きは良いのだが、それもそのはず
この芸名ジョン・ハローランという人はもともと柔道家。
本名はジャック・セルゲルといって戦前のアメリカ柔道界では、
かなり実力者だったようだ(最終四段)。
ロス市警の警官でもあったのだけど、1944年に辞職。
(一説には、あまりに柔道に入れ込んでいたためFBIに調査され、頭にきて辞めたとも)
そこをキャグニーに拾われてこの映画に出演したそうだ。
この後も俳優としてかなりの数の出演作があるから、転職成功だったみたい(笑
キャグニーも、実生活でも柔道を好み、二段くらいにまでなっている。
彼の趣味がうまく活かされた映画ということなんだね。
ちなみにこの映画、アメリカで公開されたのが
1945年6月28日だそうだ。
沖縄も陥落し、日本の敗色濃厚とはいえ、まだ原爆実験も行われていない。
アメリカ軍の損害が25万とも100万とも予想された日本本土上陸作戦の
可能性もあった時期に日本贔屓とも言える映画が公開されていたのはちょっとビックリ。
監督・フランク・ロイド
出演・ジェームズ・キャグニー、シルヴィア・シドニー
戦前の東京を舞台にキャグニー扮する新聞記者が、
実在した怪文書「田中上奏文」を巡り活躍する諜報物。
あらすじ
東京にある米国新聞社「東京クロニクル」の編集局長キャグニーは
時の首相・田中儀一が中国全土、ひいてはアメリカ征服をも計画している
という記事を書き、当局にマークされる。
ソースは噂らしい。
折も折、部下のミラーが何故か大金を手にし、突然帰国するという。
キャグニーが船に見送りに行くと、ミラー夫人は殺されており、
謎の女が部屋から逃げ出す。
ミラー夫はキャグニーの家に転がり込むが撃たれており、
問題の計画、田中文書を手渡して死んでしまう。
でっち上げの罪で一晩拘留されたキャグニーが帰宅すると、
死体も隠した文書も消えている。
文書が公表されれば反日活動が起こってしまう。
取り戻したい田中首相、東条英機と会ったキャグニーは、
ミラー夫妻を殺したオオシマ巡査部長が逮捕されたら文書は現れるだろう、
と返還を拒む。
田中達は、米中ハーフの女シルヴィア・シドニーをキャグニーに接近させ
文書を取り戻そうとする。
ミラーの船室に潜んでいたのも彼女だ。
シドニーは田中の手先でありながらも、中国侵略を防ぎたいという心もあり
次第にキャグニー側になる。
実は文書も彼女がキャグニーの家から盗んだまま、
田中には渡さず隠し持っていた。
盗聴で彼女の心変わりは田中側に知れてしまうが、
間一髪逃げ出して潜伏する。
シドニーと会ったキャグニーは、文書を彼女に託し、
オオシマ巡査部長と対決し倒す。
アメリカ大使館に向かったキャグニーは待ち伏せにあうが、
文書を持っていないことから、日本側も手を引き、無事大使館に保護される。
おしまい。
パブリットグメインの格安DVD化されてるし、題名が題名なんで
とんでもなくC級と思う向きもおられようが、なかなか見ごたえのある
ちゃんとした(笑)映画。
監督のフランク・ロイドは古くから活躍してたベテランだし、
プロデューサーのウィリアム・キャグニーはジェームズの弟だから
まぁ、変なもの作るわけもないか。
キャグニーは30年代の作品のようなエネルギーはちょっと減少気味だけど、
まだまだ魅力的で、なんというか「姿が良い」
シルヴィア・シドニーも、ハーフと見えなくもない顔立ちだし、
エキゾチックな役柄に合ってる。
また特に素晴らしいのが彼女の衣装で、すっごく素敵。
外出着は「ちょっと盛り付けすぎ?」とも思うが、自室での服も中国風味で、
ハリウッドは本当に「夢の工場」だったんだな…と思わせる。
ちなみに衣装デザインのマイケル・ウォルフはこの作品が初仕事だとか。
1945年公開ということで、「日本人にとって異国情緒溢れる日本」が出ると思いきや、
これが意外にまとも。
看板などの日本語は、多少は変だが、決してデタラメに漢字並べただけではなく
日本語になってる。
また日本語のセリフもイントネーションは仕方ないが、言葉の区切りなどが正しく
聞けばちゃんとした日本語になってる。
街中の風景や人々の服装、お店の内部なども「戦前の浅草とかならあり得るのかな」
程度にまとまっている。
シルヴィア・シドニーのホテルの部屋では、フランク・ロイド・ライトの帝国ホテルの
ような装飾も見られ、これはかなり日本に詳しい人がきちんと関わってると思われる。
そのかいあってか、1945年度のアカデミー室内装飾賞白黒部門を獲得してる。
本作では、田中儀一、東条、命懸けで田中たちに反対するタツギ殿下など
主要日本人役を白人俳優が演じてる。
ちなみに東条をやってるのは「キング・コング」のデナム役で有名な
ロバート・アームストロング。
この手の映画の場合、「そんな顔だから」というだけで、
素性の知れないアジア系の人が演じることが多く、たいていの場合素人同然、
演技もへったくれもない、ってのがあるけど、本作では演技力のある俳優。
お陰で自然に見れていいんだけど、アジア系じゃないから違和感がないというのも
裏をかかれたようでおもしろい。
もっとも日本人同士の場面でも英語だが、これはアメリカ映画だし仕方ないね。
ついでに書くと、東条は誰が見ても「東条だな」ってくらいよく似せてる。
田中儀一も本物よりかなり悪人顔だけど雰囲気は似ている。
もうひとつ、この映画で特筆すべきは柔道。
柔道や柔術はかなり古くからアメリカ映画の中に顔を出していて、
最古のものは1921年。
日本人の召使が柔術を使うシーンがあるそうだ(題名は調査中)
しかし、この映画では柔道が全面に現れている。
まずキャグニーは柔道の黒帯という設定。
敵役のオオシマ巡査部長も使い手で、クライマックスでは大柔道格闘シーンがある。
最終的に柔道では適わないとわかったキャグニーがパンチ連打で勝つとはいえ、
このシーンの迫力は今見てもなかなかのものだ。
特に長身のオオシマ巡査部長の動きは良いのだが、それもそのはず
この芸名ジョン・ハローランという人はもともと柔道家。
本名はジャック・セルゲルといって戦前のアメリカ柔道界では、
かなり実力者だったようだ(最終四段)。
ロス市警の警官でもあったのだけど、1944年に辞職。
(一説には、あまりに柔道に入れ込んでいたためFBIに調査され、頭にきて辞めたとも)
そこをキャグニーに拾われてこの映画に出演したそうだ。
この後も俳優としてかなりの数の出演作があるから、転職成功だったみたい(笑
キャグニーも、実生活でも柔道を好み、二段くらいにまでなっている。
彼の趣味がうまく活かされた映画ということなんだね。
ちなみにこの映画、アメリカで公開されたのが
1945年6月28日だそうだ。
沖縄も陥落し、日本の敗色濃厚とはいえ、まだ原爆実験も行われていない。
アメリカ軍の損害が25万とも100万とも予想された日本本土上陸作戦の
可能性もあった時期に日本贔屓とも言える映画が公開されていたのはちょっとビックリ。
「青春の気流」 感想
1942年東宝作品
監督・伏水修 脚本・黒澤明
出演・大日向傅、原節子、山根寿子
南川潤の「愛情建設」「生活の設計」を黒澤明が脚色した
恋愛&航空機開発映画。
航空機会社の開発者、大日向傅は新型旅客機の基本構想をまとめ、
役員、クライアントたちに発表する。
革新的な設計を進歩主義の専務、進藤英太郎は支持するが、
堅実派の専務、清川荘司は難色を示す。
進藤英太郎の娘、原節子はモダンな娘で大日向に好意を寄せている。
しかし大日向は、古風な娘、山根寿子と交際を続けていた。
二人の専務の対立の間で苦労する大日向だが、設計部長が
派閥を超えて協力してくれたこともあり、開発は進む。
やがて大日向は山根に結婚を申し込むが、どうもはっきりしない。
母、弟との3人暮らしの彼女は、自分が結婚したら家計はどうなる?
と、どうしようもないことを心配しているのだ。
来週、後に黒澤夫人となる矢口陽子も働いているこの喫茶店で
返事を聞かせてくれ、と約束するが、山根は現れず、
家も勤め先も知らない大日向は落ち込む。
一方、原節子もおばさんが持ってきた縁談に悩む。
父、進藤は娘の胸中を知り、大日向に「娘をもらってはくれまいか」と持ちかける。
大日向、困る。
山根は弟に家計の心配を打ち明ける。
弟は大日向の会社に出向き、自分も入営を控えた身、
姉と結婚して母親の面倒も見てくれと頼む。
大日向はもちろん承諾。
進藤と弁当食べながら、原節子との話は断る。
父の様子からフラれたことを知った原節子は
「大丈夫よ」とか言ってピアノ弾きながら泣いちゃう。
堅実派の専務は負けて会社を去り、新型旅客機は完成。
テストパイロット、藤田進の手で初飛行する。
「初飛行の日に結婚しよう」と言っていた大日向と山根は無事結婚。
ふっきれた原節子も出席し、お祝いする。
めでたしめでたし。
時局柄、タイトル前に「征かぬ身は いくぞ援護へまっしぐら」
なんてスローガンが出る。
劇中でも「この新型旅客機が大東亜共栄圏を…」なんて部分もあるけど
とってつけたようで、これは検閲対策でしょう。
映画全体としてはごく普通の映画。
ただ、じゃあ面白いかと言うと微妙。
二人の専務と二人の女。
共に進歩派と古典派。
この間に置かれた大日向、という設定は悪くないと思うんだけど、
どうも恋愛部分と飛行機部分のバランスが悪い。
どっちかを主軸にすべきなんだけど、見た印象では半々くらいに感じる。
しかも、恋愛部分がつまんない(笑
戦時中だから奔放な女性は描けないとはいえ原節子のお転婆ぶりは中途半端だし、
山根の性格も時代を考慮しても古臭すぎる感がある。
黒澤明は女性の描き方は上手いとは言いにく人だし、
「これくらいなら平気かな」と検閲を気にしながら書いたんではあろうが、
つまんないものはつまんない。
今、この映画で興味深いのは、むしろ飛行機部分で、
冒頭、長々と述べられる基本構想、風洞実験や翼の過重試験の様子などが面白い。
またラスト、完成なった新型旅客機のテスト飛行の様子もいい。
使われているのは三菱MC-20旅客機だが、銀色の機体は
非常にスマート。
この飛行機の飛行シーンというのは珍しいんじゃないかな?
伏水修の演出は堅実だが、大日向が部屋で寝転がってクサるシーンなど
長いわりにはあまり効果が無いように思える。
また、妙な風に音楽が使われているところがあるんだけど、
黒澤得意の対位法という感じでもなく、これは敵性音楽に対する
風当たりが強くなった時代に、せめて劇中で聞かせてやろうという
配慮だったのかもしれない。
出演者は安心して見ていられる人ばかり。
いつも鼻毛抜いてる設計部長、真木順はいい味。
三益愛子と並ぶ日本映画母親役界の巨頭、英百合子も出番は少ないが
しっかり母親してる。
特にいいのがテストパイロット、藤田進。
軍人など武張った役のイメージが強い人だけど、この映画では気さくな役。
革の上着を着て、髪もキチンと撫で付けて、ちょっとイメージ変りました。
監督・伏水修 脚本・黒澤明
出演・大日向傅、原節子、山根寿子
南川潤の「愛情建設」「生活の設計」を黒澤明が脚色した
恋愛&航空機開発映画。
航空機会社の開発者、大日向傅は新型旅客機の基本構想をまとめ、
役員、クライアントたちに発表する。
革新的な設計を進歩主義の専務、進藤英太郎は支持するが、
堅実派の専務、清川荘司は難色を示す。
進藤英太郎の娘、原節子はモダンな娘で大日向に好意を寄せている。
しかし大日向は、古風な娘、山根寿子と交際を続けていた。
二人の専務の対立の間で苦労する大日向だが、設計部長が
派閥を超えて協力してくれたこともあり、開発は進む。
やがて大日向は山根に結婚を申し込むが、どうもはっきりしない。
母、弟との3人暮らしの彼女は、自分が結婚したら家計はどうなる?
と、どうしようもないことを心配しているのだ。
来週、後に黒澤夫人となる矢口陽子も働いているこの喫茶店で
返事を聞かせてくれ、と約束するが、山根は現れず、
家も勤め先も知らない大日向は落ち込む。
一方、原節子もおばさんが持ってきた縁談に悩む。
父、進藤は娘の胸中を知り、大日向に「娘をもらってはくれまいか」と持ちかける。
大日向、困る。
山根は弟に家計の心配を打ち明ける。
弟は大日向の会社に出向き、自分も入営を控えた身、
姉と結婚して母親の面倒も見てくれと頼む。
大日向はもちろん承諾。
進藤と弁当食べながら、原節子との話は断る。
父の様子からフラれたことを知った原節子は
「大丈夫よ」とか言ってピアノ弾きながら泣いちゃう。
堅実派の専務は負けて会社を去り、新型旅客機は完成。
テストパイロット、藤田進の手で初飛行する。
「初飛行の日に結婚しよう」と言っていた大日向と山根は無事結婚。
ふっきれた原節子も出席し、お祝いする。
めでたしめでたし。
時局柄、タイトル前に「征かぬ身は いくぞ援護へまっしぐら」
なんてスローガンが出る。
劇中でも「この新型旅客機が大東亜共栄圏を…」なんて部分もあるけど
とってつけたようで、これは検閲対策でしょう。
映画全体としてはごく普通の映画。
ただ、じゃあ面白いかと言うと微妙。
二人の専務と二人の女。
共に進歩派と古典派。
この間に置かれた大日向、という設定は悪くないと思うんだけど、
どうも恋愛部分と飛行機部分のバランスが悪い。
どっちかを主軸にすべきなんだけど、見た印象では半々くらいに感じる。
しかも、恋愛部分がつまんない(笑
戦時中だから奔放な女性は描けないとはいえ原節子のお転婆ぶりは中途半端だし、
山根の性格も時代を考慮しても古臭すぎる感がある。
黒澤明は女性の描き方は上手いとは言いにく人だし、
「これくらいなら平気かな」と検閲を気にしながら書いたんではあろうが、
つまんないものはつまんない。
今、この映画で興味深いのは、むしろ飛行機部分で、
冒頭、長々と述べられる基本構想、風洞実験や翼の過重試験の様子などが面白い。
またラスト、完成なった新型旅客機のテスト飛行の様子もいい。
使われているのは三菱MC-20旅客機だが、銀色の機体は
非常にスマート。
この飛行機の飛行シーンというのは珍しいんじゃないかな?
伏水修の演出は堅実だが、大日向が部屋で寝転がってクサるシーンなど
長いわりにはあまり効果が無いように思える。
また、妙な風に音楽が使われているところがあるんだけど、
黒澤得意の対位法という感じでもなく、これは敵性音楽に対する
風当たりが強くなった時代に、せめて劇中で聞かせてやろうという
配慮だったのかもしれない。
出演者は安心して見ていられる人ばかり。
いつも鼻毛抜いてる設計部長、真木順はいい味。
三益愛子と並ぶ日本映画母親役界の巨頭、英百合子も出番は少ないが
しっかり母親してる。
特にいいのがテストパイロット、藤田進。
軍人など武張った役のイメージが強い人だけど、この映画では気さくな役。
革の上着を着て、髪もキチンと撫で付けて、ちょっとイメージ変りました。
「ガンバス」 感想
1986年 イギリス映画
監督・ゾーラン・ペリシック
出演・スコット・マクギニス、ジェフ・オスターハージ
第一次大戦も始まっているというのに、いまだ西部開拓時代のような
アメリカの田舎で銀行強盗をやってるバーニーとルーク。
ある町でヘマをやって捕まり、軍に入隊させられてしまう。
送られたフランスで二人はドイツの重爆撃機を二挺拳銃で
撃ち落したりなんかして、お気楽ぶりを発揮するが、
バーで女性を巡って喧嘩したあげく、賭けで飛行機ガンバスの
操縦をすることになる。
どうにかフラフラと飛び上がった二人、雲の中で巨大な物体を目撃、
その後辿り付いた戦闘機部隊の飛行場に着陸というか墜落する。
軍が探していた巨大物体(ドイツ飛行船)を目撃していたのが幸いし、
二人は戦闘機隊の一員となる。
二人はスイスに逃げようと企むのだが、偵察飛行隊からサルムソンを
かっぱらってきたところ、これで飛行船を攻撃してこい、
と出撃することになってしまう。
飛行船基地を攻撃する二人だが、対空砲にやられルークが捕虜に。
戻ったバーニーはガンバスに乗り込み救出に向かう。
金庫破りで得意のダイナマイトを使って助け出すが、
まだ飛行船を破壊しなければならない。
二人がガンバスで戦っていると戦闘機隊が到着。
ついに巨大飛行船を倒す。
アメリカに戻った二人は、またもや銀行強盗をしている。
でも、もう追っ手が来ても捕まる心配もない。
いまや二人の逃走手段はガンバスだからだ。
ストーリーだけ追うと、戦争活劇のようなんだけど、
ちょっとファンタジーが入った不思議な感じの映画。
二人組が入ることになる戦闘機隊は「特攻部隊」と自称してて、
隊員もちょっと変な人物ばかり。
部隊の食堂テントも、エキゾチックな女が踊ってたりして、
まるでサーカス小屋のよう。
ドイツの飛行船も夢いっぱい。
空中戦艦のようなシロモノで、ゴンドラ部分は装甲完備、
大砲はあるわロケット砲はあるわ、空中機雷まで発射しちゃう。
ラストで駆けつけてくる戦闘機隊も。
頭がおかしくなった天才的メカニックが作り上げた飛行機が来るんだけど、
これはもう完全ファンタジーで、自動車に翼をつけたものとか、
二機の飛行機を上下にくっつけた四葉機とか…。
この部分は完全に「スカイキッド ブラック魔王」してます。
こう書くと「なぁんだ、考証無視のデタラメか…」と思うでしょ?
ところが、違う。
妙に凝ってる部分があるから不思議。
まず二人が乗る、題名にもなってるヴィッカースF.B.5ガンバス。
設計時から機銃を装備した最初期の飛行機で、世界初の戦闘機隊・
英軍第11飛行隊の使用機であった、つまり世界初の戦闘機とも言える
飛行機です。
非力だったため、すぐに戦闘機としては役立たずになり、
練習機にされてしまったというもので、歴史的ではあるが
地味といえば地味な飛行機です。
映画ではレプリカ機が飛行しますが、よく見ると細部が違う。
どうも他の飛行機を改造したようです。
この点は検索しても情報がなく、海外のフォーラムでも
「『ロジャー・ムーア/冒険野郎』で使ったレプリカ機だ」
「いや、デハビランド D.H.2の改造らしい」と結論は出てないみたい。
第一次大戦の飛行機映画は少なくないけど、プッシャー式の飛行機が主役なんてのは、
これと「青島要塞爆撃命令」くらいじゃないでしょうか?
また飛行船格納庫の中を飛び回ることになるサルムソン2。
字幕では「サムソン」でしたがサルムソンです。
これは大戦後期に登場した非常な傑作機で、偵察・軽爆撃機として広く使用。
戦後、日本でも偵察機として長らく使われてたものです。
…が、この飛行機も見た目は冴えないんですよね。
ストーリー上、複座機が必要なんですが、ブリストル・ファイターとか
もっと見栄えのする複座機もあるのに、なぜサルムソンにするのか!
複葉機モノの映画ではタイガー・モスとかステアマンといった、
現存機が多い1930年代の物を使って誤魔化す場合が多い中、
わざわざこんな飛行機たちを使ったのは、スタッフ中に
飛行機マニアがいたのは間違いありません。
ちなみにこの映画、劇映画としては最多スタッフ数(532人)記録を
持っているんだそうで、このスタッフたちがなにをしたのかも
謎です(笑
ストーリー的には十分面白く、飛行機好きにも複雑に楽しめる。
機会があったら見てもいい映画と思います。
監督・ゾーラン・ペリシック
出演・スコット・マクギニス、ジェフ・オスターハージ
第一次大戦も始まっているというのに、いまだ西部開拓時代のような
アメリカの田舎で銀行強盗をやってるバーニーとルーク。
ある町でヘマをやって捕まり、軍に入隊させられてしまう。
送られたフランスで二人はドイツの重爆撃機を二挺拳銃で
撃ち落したりなんかして、お気楽ぶりを発揮するが、
バーで女性を巡って喧嘩したあげく、賭けで飛行機ガンバスの
操縦をすることになる。
どうにかフラフラと飛び上がった二人、雲の中で巨大な物体を目撃、
その後辿り付いた戦闘機部隊の飛行場に着陸というか墜落する。
軍が探していた巨大物体(ドイツ飛行船)を目撃していたのが幸いし、
二人は戦闘機隊の一員となる。
二人はスイスに逃げようと企むのだが、偵察飛行隊からサルムソンを
かっぱらってきたところ、これで飛行船を攻撃してこい、
と出撃することになってしまう。
飛行船基地を攻撃する二人だが、対空砲にやられルークが捕虜に。
戻ったバーニーはガンバスに乗り込み救出に向かう。
金庫破りで得意のダイナマイトを使って助け出すが、
まだ飛行船を破壊しなければならない。
二人がガンバスで戦っていると戦闘機隊が到着。
ついに巨大飛行船を倒す。
アメリカに戻った二人は、またもや銀行強盗をしている。
でも、もう追っ手が来ても捕まる心配もない。
いまや二人の逃走手段はガンバスだからだ。
ストーリーだけ追うと、戦争活劇のようなんだけど、
ちょっとファンタジーが入った不思議な感じの映画。
二人組が入ることになる戦闘機隊は「特攻部隊」と自称してて、
隊員もちょっと変な人物ばかり。
部隊の食堂テントも、エキゾチックな女が踊ってたりして、
まるでサーカス小屋のよう。
ドイツの飛行船も夢いっぱい。
空中戦艦のようなシロモノで、ゴンドラ部分は装甲完備、
大砲はあるわロケット砲はあるわ、空中機雷まで発射しちゃう。
ラストで駆けつけてくる戦闘機隊も。
頭がおかしくなった天才的メカニックが作り上げた飛行機が来るんだけど、
これはもう完全ファンタジーで、自動車に翼をつけたものとか、
二機の飛行機を上下にくっつけた四葉機とか…。
この部分は完全に「スカイキッド ブラック魔王」してます。
こう書くと「なぁんだ、考証無視のデタラメか…」と思うでしょ?
ところが、違う。
妙に凝ってる部分があるから不思議。
まず二人が乗る、題名にもなってるヴィッカースF.B.5ガンバス。
設計時から機銃を装備した最初期の飛行機で、世界初の戦闘機隊・
英軍第11飛行隊の使用機であった、つまり世界初の戦闘機とも言える
飛行機です。
非力だったため、すぐに戦闘機としては役立たずになり、
練習機にされてしまったというもので、歴史的ではあるが
地味といえば地味な飛行機です。
映画ではレプリカ機が飛行しますが、よく見ると細部が違う。
どうも他の飛行機を改造したようです。
この点は検索しても情報がなく、海外のフォーラムでも
「『ロジャー・ムーア/冒険野郎』で使ったレプリカ機だ」
「いや、デハビランド D.H.2の改造らしい」と結論は出てないみたい。
第一次大戦の飛行機映画は少なくないけど、プッシャー式の飛行機が主役なんてのは、
これと「青島要塞爆撃命令」くらいじゃないでしょうか?
また飛行船格納庫の中を飛び回ることになるサルムソン2。
字幕では「サムソン」でしたがサルムソンです。
これは大戦後期に登場した非常な傑作機で、偵察・軽爆撃機として広く使用。
戦後、日本でも偵察機として長らく使われてたものです。
…が、この飛行機も見た目は冴えないんですよね。
ストーリー上、複座機が必要なんですが、ブリストル・ファイターとか
もっと見栄えのする複座機もあるのに、なぜサルムソンにするのか!
複葉機モノの映画ではタイガー・モスとかステアマンといった、
現存機が多い1930年代の物を使って誤魔化す場合が多い中、
わざわざこんな飛行機たちを使ったのは、スタッフ中に
飛行機マニアがいたのは間違いありません。
ちなみにこの映画、劇映画としては最多スタッフ数(532人)記録を
持っているんだそうで、このスタッフたちがなにをしたのかも
謎です(笑
ストーリー的には十分面白く、飛行機好きにも複雑に楽しめる。
機会があったら見てもいい映画と思います。
「銀嶺の果て」 感想
1947年東宝作品
監督・谷口千吉 脚本・黒澤明
黒澤明と共に山本嘉次郎の助監督だった谷口千吉の
第1回監督作にして三船敏郎のデビュー作。
ストーリーは比較的単純。
3人の銀行強盗が北アルプスの雪山に逃げ込む。
追ってきた警官隊に発砲した小杉義男は雪崩に巻き込まれて死んでしまうが、
残った志村喬と三船敏郎は山小屋にたどり着く。
しばらく下界とは行き来が出来ない天候の中、
2人の悪人は山小屋で過ごす羽目になる。
小屋の隠居と純朴な孫娘、馴染み客の登山家と過ごすうち、
志村は本来の人の良さを垣間見せるようになるが、三船はイライラ。
やがて道が復旧しそうになることを知った2人は登山家に道案内を強制。
山越えをしようとする。
2人が落ちそうになるのを登山家は体を張って助けるが、腕を骨折。
登山家を残すかどうかで争いになり、三船は谷底へ。
残った志村は登山家を背負い、山小屋へ戻って行く…。
谷口千吉は、同じ山本嘉次郎の助監督だった黒澤や本多猪四郎と比べると
大成したとは言い切れない人だけど、この作品を見ると、
もっと活躍できたのではないかと思う。
自身も登山家だっただけあって、雪山のシーンは特に素晴らしい。
邦画で雪山というと「八甲田山」が思い浮かぶが、この作品の雪山は
白黒にもかかわらずより美しい。
演出は、正直言って「まだ手探りのところもあったのかな」と思わせるけど、
「懐かしきケンタッキーの我が家」を聞く志村がうつむいていくシーンや
前半の逃避行で使われるアップなど、光るものがあると思う。
黒澤の脚本はもともと「山小屋の三悪人」だったそうで、
こう聞くとジョン・フォードの影響があるのかな…などとも思う。
真っ先に思い浮かぶのは「三悪人」だけど、確かに純粋な者、
(「三悪人」だと娘、「銀嶺の果て」だと娘と登山家だろうか)
との関係で悪人が善人へと戻るという点は似ているのかもしれない。
出演者について言うと、三船は、なんていうか初期のあの三船そのまま(笑
志村は、ヒゲ面で黒メガネをかけてニタ〜っと笑うところが
すごくスケベそうでいい。
印象が強いのが山小屋の隠居・高堂国典。
「姿 三四郎」の和尚。「七人の侍」の「やるべし」の爺さんだ。
この人、なにを見ても家老とか長老みたいな役ばっか(笑
でも凄く個性があって力強いんだよね。
ちなみにこの作品は警察から借りた本物の拳銃を使っていることでも有名。
山小屋で三船がブローニングM1910を掃除するシーンでよくわかります。
お勧めの作品です。
監督・谷口千吉 脚本・黒澤明
黒澤明と共に山本嘉次郎の助監督だった谷口千吉の
第1回監督作にして三船敏郎のデビュー作。
ストーリーは比較的単純。
3人の銀行強盗が北アルプスの雪山に逃げ込む。
追ってきた警官隊に発砲した小杉義男は雪崩に巻き込まれて死んでしまうが、
残った志村喬と三船敏郎は山小屋にたどり着く。
しばらく下界とは行き来が出来ない天候の中、
2人の悪人は山小屋で過ごす羽目になる。
小屋の隠居と純朴な孫娘、馴染み客の登山家と過ごすうち、
志村は本来の人の良さを垣間見せるようになるが、三船はイライラ。
やがて道が復旧しそうになることを知った2人は登山家に道案内を強制。
山越えをしようとする。
2人が落ちそうになるのを登山家は体を張って助けるが、腕を骨折。
登山家を残すかどうかで争いになり、三船は谷底へ。
残った志村は登山家を背負い、山小屋へ戻って行く…。
谷口千吉は、同じ山本嘉次郎の助監督だった黒澤や本多猪四郎と比べると
大成したとは言い切れない人だけど、この作品を見ると、
もっと活躍できたのではないかと思う。
自身も登山家だっただけあって、雪山のシーンは特に素晴らしい。
邦画で雪山というと「八甲田山」が思い浮かぶが、この作品の雪山は
白黒にもかかわらずより美しい。
演出は、正直言って「まだ手探りのところもあったのかな」と思わせるけど、
「懐かしきケンタッキーの我が家」を聞く志村がうつむいていくシーンや
前半の逃避行で使われるアップなど、光るものがあると思う。
黒澤の脚本はもともと「山小屋の三悪人」だったそうで、
こう聞くとジョン・フォードの影響があるのかな…などとも思う。
真っ先に思い浮かぶのは「三悪人」だけど、確かに純粋な者、
(「三悪人」だと娘、「銀嶺の果て」だと娘と登山家だろうか)
との関係で悪人が善人へと戻るという点は似ているのかもしれない。
出演者について言うと、三船は、なんていうか初期のあの三船そのまま(笑
志村は、ヒゲ面で黒メガネをかけてニタ〜っと笑うところが
すごくスケベそうでいい。
印象が強いのが山小屋の隠居・高堂国典。
「姿 三四郎」の和尚。「七人の侍」の「やるべし」の爺さんだ。
この人、なにを見ても家老とか長老みたいな役ばっか(笑
でも凄く個性があって力強いんだよね。
ちなみにこの作品は警察から借りた本物の拳銃を使っていることでも有名。
山小屋で三船がブローニングM1910を掃除するシーンでよくわかります。
お勧めの作品です。
「シムソンズ」 感想
トリノオリンピック真っ最中に公開されたカーリング映画。
ちょうどチーム青森の活躍で沸いていた時に公開されたのを憶えている。
物語は、トリノの前回のソルトレークシティオリンピックに出場した
女子カーリングチームであるシムソンズの実話をベースにしている。
一般的なジャンルで言えば「青春スポーツ映画」というところだけど
「ウォーターボーイズ物」とか「スウィングガールズ物」とか
「ロボコン物」とか言った方が早いかも。
つまり「ひょんなことから、なにかを始めてしまった若者たちがうまく行く」映画。
元祖は「シコふんじゃった。」とか「がんばっていきまっしょい」あたりなのかな?
今やすっかり邦画の一ジャンルになってしまったような感がある。
…でも、正直言ってこの手の映画は食傷気味。
はっきり言えば「いいかげんにしろよぉ」なジャンルだ。
ま、作りやすいんだろうなとは思う。
大抵は、素人もしくは落ちこぼれの子がなにかを始めて成功する。
大げさに言えばサクセスストーリー、もしくは再生物語。
これだけで基本構造は十分。
そこに、「七人の侍」のような仲間集めだとか、特訓だとか、ライバルだとか
適度に面白い要素が入るんだもの。
この映画も、お決まりのパターン。
素人娘3人。チーム唯一の経験者は他の3人に心を開かない。
コーチもある出来事でカーリング界から追い出された男。
受験勉強を強いる親もいる。
ライバルチームはイヤミだ。
もう、王道です。
…が、しかし!
「シムソンズ」は面白いんだ、これが。
いや、面白いというより、楽しい。
確かにベタベタの展開なんだが、これは逆に言えば、絶対に破綻がない。
だから余計なこと考えずにボーっと安心してみてられる(笑
しかも、実話ベースだ。
だいぶ脚色されているとはいえ、シムソンズは実際にオリンピック出てるんだから、
「ありえねぇだろ」とか思う必要もない。
なによりいいのが加藤ローサ率いるシムソンズの娘たち。
みんな自然体な感じがしてすごく活き活きしてる。
台詞もいかにも若い子の会話という雰囲気がよく出ている。
特に加藤ローサは文句なしにいい。
ま、私の好みは高橋真唯なんだが、この映画的には加藤ローサが一番。
ベタな展開も吹っ飛ばすくらいの魅力がある。
子持ちのコーチ・大泉洋も、これはちょっと物足りない点もあるけど
けっして悪くない。
ホタテ貝とカーリング以外、なーんもない常呂町の女子高生が
「きらきら〜っとしたもの」をみつける。
ワクワクさせ、ホロっとさせ。
いい意味で「普通に楽しい映画」
佳作と言っていい映画だと思う。
ちょうどチーム青森の活躍で沸いていた時に公開されたのを憶えている。
物語は、トリノの前回のソルトレークシティオリンピックに出場した
女子カーリングチームであるシムソンズの実話をベースにしている。
一般的なジャンルで言えば「青春スポーツ映画」というところだけど
「ウォーターボーイズ物」とか「スウィングガールズ物」とか
「ロボコン物」とか言った方が早いかも。
つまり「ひょんなことから、なにかを始めてしまった若者たちがうまく行く」映画。
元祖は「シコふんじゃった。」とか「がんばっていきまっしょい」あたりなのかな?
今やすっかり邦画の一ジャンルになってしまったような感がある。
…でも、正直言ってこの手の映画は食傷気味。
はっきり言えば「いいかげんにしろよぉ」なジャンルだ。
ま、作りやすいんだろうなとは思う。
大抵は、素人もしくは落ちこぼれの子がなにかを始めて成功する。
大げさに言えばサクセスストーリー、もしくは再生物語。
これだけで基本構造は十分。
そこに、「七人の侍」のような仲間集めだとか、特訓だとか、ライバルだとか
適度に面白い要素が入るんだもの。
この映画も、お決まりのパターン。
素人娘3人。チーム唯一の経験者は他の3人に心を開かない。
コーチもある出来事でカーリング界から追い出された男。
受験勉強を強いる親もいる。
ライバルチームはイヤミだ。
もう、王道です。
…が、しかし!
「シムソンズ」は面白いんだ、これが。
いや、面白いというより、楽しい。
確かにベタベタの展開なんだが、これは逆に言えば、絶対に破綻がない。
だから余計なこと考えずにボーっと安心してみてられる(笑
しかも、実話ベースだ。
だいぶ脚色されているとはいえ、シムソンズは実際にオリンピック出てるんだから、
「ありえねぇだろ」とか思う必要もない。
なによりいいのが加藤ローサ率いるシムソンズの娘たち。
みんな自然体な感じがしてすごく活き活きしてる。
台詞もいかにも若い子の会話という雰囲気がよく出ている。
特に加藤ローサは文句なしにいい。
ま、私の好みは高橋真唯なんだが、この映画的には加藤ローサが一番。
ベタな展開も吹っ飛ばすくらいの魅力がある。
子持ちのコーチ・大泉洋も、これはちょっと物足りない点もあるけど
けっして悪くない。
ホタテ貝とカーリング以外、なーんもない常呂町の女子高生が
「きらきら〜っとしたもの」をみつける。
ワクワクさせ、ホロっとさせ。
いい意味で「普通に楽しい映画」
佳作と言っていい映画だと思う。

